不祥事の発見統制について〜不祥事を小さな芽のうちに摘むために〜

◆1番(勝股修二) 次に入ります。
 それでは、質問事項2、不祥事の発見統制についてに入ります。
 一定程度の組織において、不祥事はあってはならないものと遠ざけるのではなく、必ず起きるものとして正面から向き合う必要があります。実際に本市では、公金詐取事件という大きな不祥事が発生しました。先ほど同僚議員のほうからも、その事件についての現状についてお伺いしましたが、私のほうからは今後について、ちょっと御質問をさせていただこうと思います。
 令和5年6月定例会において、性弱説に基づいた業務システムの構築が必要であるとの前提に基づいて質問を行いましたが、これは不祥事が発生しないよう、未然に防ぐための予防統制の観点からの質問でした。一般にも平時のリスク管理では、不祥事を発生させないための予防統制に力点が置かれてきましたが、最近では一定の確率で不祥事が発生してしまうことを前提とした発見統制に力点が移りつつあります。
 そこで、不祥事にどのように対処しているか、発見統制の観点から本市の現状について伺っていきます。

⑴ リスク情報を収集し、適切に報告するための研修について

ア 中間管理層への研修の実施状況について

◆1番(勝股修二) 公金詐取事件の公判を傍聴させていただきましたが、弁護側の主張として、令和2年9月に発覚した事案を適切に対応しなかったことで、より巧妙になっていってしまったということでした。このことは公金詐取に係る再発防止等検証結果報告書においても、不正事案への誤った対応として、不正送金の長期化を招き、額の増加、証拠の隠滅等を招いたことは本市も認めるところです。
 実際に先月24日には、元会計管理者兼会計課長の重大な過失について、監査委員へ賠償責任の有無及び賠償額の決定が求められました。尾張旭市危機管理指針に、危機事象に対する初動対応が遅れることは被害の拡大等につながるとあるように、2年余りも対応が遅れたことで5,000万円以上まで拡大したわけです。
 このように、今回はメインラインである職制上の業務連絡、相談経路--以下、レポートラインとさせていただきますが--がうまく働かなかった、目詰まりを起こしてしまったことが大きな要因となりました。「図解不祥事の予防・発見・対応がわかる本」においては、不祥事の発見には、何よりも、平常時から機能すべきメインラインを磨かなければなりませんとあります。メインラインを強化するための有効な方法は、中間管理層研修を行い、中間管理層のリスクリテラシーを高めることが重要とされております。
 そこで、小項目(1)、リスク情報を収集し、適切に報告するための研修について、ア、中間管理層への研修の実施状況についてお伺いします。

◎企画部長(松原芳宣) お答えします。
 不祥事を含めたリスク管理に関する研修につきましては、係長、課長補佐昇任時の階層別研修の中で実施しております。
 また、例年危機管理課が実施している危機管理研修については、隔年で課長補佐級を対象に実施しております。
 さらに、今回の公金詐取を受け、全職員を対象に法令遵守研修を実施したところです。
 以上でございます。

◆1番(勝股修二) 御答弁ありがとうございます。
 主に課長補佐級にリスク管理や危機管理についての研修を行っているということでした。
 今回の事件では課長補佐級は適切な対応をとっており、課長級での目詰まりということでしたので、研修対象について改めて御検討いただければと思います。意識と行動の変革には継続的な研修が必要になりますので、負担にならない範囲で、各階層の研修プログラムに組み込んでいただけるよう要望をいたします。

イ 研修内容について

◆1番(勝股修二) 次に、イ、研修内容についてお伺いします。

◎企画部長(松原芳宣) お答えします。
 新任係長研修では、内部通報や告発についての知識を深め、新任課長補佐研修では、管理職に求められるスキルの一つとして、リスクマネジメンドがあること、また、リスクを発生させないための工夫として、報告を奨励することなどについて学んでいます。
 次に、課長補佐級職員を対象とした危機管理研修では、危機管理の手順について、まず危機事象発生の把握と情報共有を行うこととしております。
 次に、法令遵守研修では、不祥事を起こさないための行動指針の一つとして、違和感や違反を見過ごさず、上司や通報窓口へ報告することの重要性などを学んでいます。
 なお、これらの研修については、必要に応じて講義形式やグループワークを用いて実施しております。
 以上でございます。

◆1番(勝股修二) ありがとうございます。
 特に報告について重点的に研修を行い、ワーク形式などで各自に考えていただいて、研修を進めていただいているとのことです。
 報告を行い、情報共有することは非常に重要で、特に今回の事件において、住宅改修の書類不備で25万円という金額が出てくるというのは、介護保険に携わったことのある方であればあり得ない話だとすぐ分かったはずです。すぐに虚偽であることが分かるようなことでした。様々な情報が複数の人の目に入るように、報告がしっかりとできるように、今後も継続的な研修をお願いいたします。

⑵ ヒヤリ・ハット報告について

ア 各部・課への依頼方法について

◆1番(勝股修二) 小項目(2)、ヒヤリ・ハット報告について移っていきます。
 不祥事の発見には、お伺いしたメインラインの強化に加えて、サブラインの整備も重要と考えられています。情報の流れを複線化することで、メインラインに乗らなかった情報でも拾い上げることができるかもしれないということです。上司に報告せずに、課内で処理してしまうような軽微と捉えられた事案についても情報収集し、分析をすることで、不正の芽を摘んでいけるかもしれません。
 損害が発生するようなアクシデントについては、危機事象連絡票を使用されると思います。損害が発生しないような事象、あるいは一歩手前の事象をインシデントといいますが、その中で気づくことができたものを本市ではヒヤリ・ハット報告にて収集をしているとのことです。
 そこで、本市におけるヒヤリ・ハット報告について、ア、各部・課への依頼方法について、どのような報告、事例を求めているのかお伺いします。

◎企画部長(松原芳宣) お答えします。
 本市では、職場で起きた災害、あるいは災害までは至らなかったが、冷やりとしたりはっとしたりした体験を報告することで、事故の再発や類似事故の防止を図り、安全な職場づくりをすることを目的として、ヒヤリ・ハット報告の提出を職員に求めています。職員には、職員ポータルにおいてヒヤリ・ハット報告の目的について周知し、ヒヤリ・ハットを体験した場合、できるだけ早く報告書を作成し、課長まで報告するよう通知しています。
 さらに、情報共有を図るため、所属内の他職員にも周知し、併せて報告書の写しを人事課に提出するよう依頼しています。
 以上でございます。

イ ヒヤリ・ハット報告の現状について

◆1番(勝股修二) ありがとうございます。
 続けてお願いしたいんですが、イ、ヒヤリ・ハット報告の現状について、報告数や報告内容についてお伺いをいたします。

◎企画部長(松原芳宣) お答えします。
 ヒヤリ・ハットの報告件数につきましては、例年、前年の10月から当年9月までの件数を取りまとめております。直近3年間の件数は、令和5年度取りまとめ分が142件、令和4年度が174件、令和3年度が190件となっております。
 内容としましては、職員の不注意や確認不足、子供の思いがけない行動などにより起こる事例が多く報告されています。
 報告された事例につきましては、職員の安全及び衛生について調査、審議する安全衛生委員会で議題として取り上げ、各委員から意見等をもらった後、報告事例を紹介した安全衛生通信を職員ポータルに掲載し、職員に周知しております。
 以上でございます。

◆1番(勝股修二) ありがとうございます。安全な職場づくりをすることを目的として提出を求め、職員の不注意や確認不足、子供の思いがけない行動による事例が多く報告されているということでした。その報告により職員の安全及び衛生について調査、審議して、全体に周知しているということです。
 ただ、せっかくのサブラインですので、安全衛生だけでは少々もったいないかと思います。東京都小平市では、ヒヤリ・ハット事例を収集するとともに、事務誤りなどのリスク発生事例も収集をして、総務省による財務に関する事務についてのリスク例などで補完することで、リスク一覧を作成して、それらについて対処をしているということで、本市でもヒヤリ・ハット報告に併せてリスク発生事例も積極的に収集してはいかがでしょうか。要望としてお伝えをいたします。
 報告件数についてはちょっと年々減っているようなんですが、ヒヤリ・ハット報告は御存じのとおり減ったほうがよいということは全くありません。実情を把握できてない、また、ヒヤリ・ハットに対して職員の意識が向かなくなってしまっているかもということで、ちょっとよくない傾向なのかなとも思います。幹部職員の皆様には、報告についての啓発をぜひお願いいたします。
 それでは、次の質問に移っていきます。

⑶ 公益通報制度の浸透度と利用状況について

◆1番(勝股修二) これまで、職制上のレポートラインというメインラインの強化、ヒヤリ・ハット報告にて、サブラインの整備をすることなどについて質問を重ねてきました。ここで、もう一つのサブラインについて伺っていきます。
 小項目(3)、公益通報制度について、その浸透度と利用状況についてお伺いします。

◎企画部長(松原芳宣) お答えします。
 公益通報制度については、平成18年4月1日の公益通報者保護法の施行に伴い、本市でも要綱を制定し、その際に職員へ周知しております。要綱につきましては、その概要及び通報処理に係るフローチャートとともに、職員ポータルに常時掲示しております。
 また、今回の公金詐取を受け、今後このような事案を防ぐため、市の事務事業の執行に関し、法令違反等に該当する事実を知り得たときは、公益通報制度に基づき情報処理担当である人事課へ通報すること、また、通報等により不利益な取扱いを受けることがないよう保護されること、通報に迷う場合には人事課へまず相談するよう改めて通知したところでございます。
 なお、制度の利用状況につきましては、これまでに実績はございません。
 以上でございます。

◆1番(勝股修二) 公益通報制度についてはしっかりと整備されて、周知をされておられるということですが、利用実績はないということでした。これは利用するような状況にはならなかったということを信じております。

再質問)公益通報制度の新規採用職員研修への組み込みについて

◆1番(勝股修二) 公益通報制度については、真に必要なのは中間管理層の部下の方々、若手職員の方々であると思います。その層には定期的に新人の方々が入っていらっしゃいます。
 そこで、再質問をお願いします。
 新規採用職員研修において、本制度について研修カリキュラムに組み込んでいらっしゃいますでしょうか。お伺いをいたします。

◎人事課長(山本智子) お答えします。
 これまでは新規採用職員研修において公益通報制度の項目はありませんでしたが、より周知を図るため、今後の新規採用研修では公益通報制度の説明を組み入れるよう、調整を進めているところでございます。
 以上でございます。

◆1番(勝股修二) ありがとうございます。
 新規採用職員研修に組み入れていただけるとのことで、ぜひ継続的な周知のほどよろしくお願い申し上げます。

⑷ 苦情の対応記録について

◆1番(勝股修二) それでは、小項目(4)、苦情についてに移っていきます。
 民間企業においては、クレームは非常に重要な情報源だと言われています。クレームには商品やサービスの問題点だけではなく、顧客の要望や嗜好がダイレクトに反映をされており、問題提起であると同時に、業務の改善や新商品の開発、経営課題の解決につながるヒントを与えてくれるものであると考えられています。ですので、いただいたクレームを組織全体で共有して、会社の財産として活用していくものであるということです。
 組織の常として、組織内部に長期に所属していると、なかなかいろいろなものが見えにくくなるものです。組織内では常識だったり当たり前だと考えられていることでも、外部から見れば非常識なことだったりするのは往々にしてありますので、外部の方の御意見を頂戴することは非常に重要であると考えます。市役所外部の意見を取り入れることについては、議員にとっての本務でもありますので、私自身も全力を尽くさなければならないと、改めて決意を新たにしているところです。
 そこで、小項目(4)、苦情の対応記録について、どのようにされておられるのか、全体での取り決めがあるのかなどについてお伺いします。

◎企画部長(松原芳宣) お答えします。
 苦情の対応記録については、全庁的な取り決めはありませんが、担当部署において必要に応じて記録を作成し、改善が必要な事項については、所属内もしくは関係部署内で共有しております。
 また、全庁的に共有が必要と思われる場合には、幹部会での情報提供や職員ポータルへの掲載などにより周知を図っております。
 以上でございます。

◆1番(勝股修二) ありがとうございます。
 現在のところ、苦情の対応記録については、全庁的な取り組みはないということでした。
 今回の質問は、民間における不祥事対応に関する成書を基に組み立てさせていただきましたが、公金詐取に係る再発防止等検証結果報告書の7、再発防止策において、導入を検討すると表明されております内部統制制度のほんの一部の部分についてでした。
 平成31年3月に総務省より公表された、地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドラインに内部統制の6つの基本的要素が記載されていますが、そのうちの④情報と伝達の項目に当たります。その中に「不正又は誤謬等の重要な情報は、関係者を通じて、組織の外部から提供されることがあるため」、中略させていただきますが、「組織の外部からの情報を入手するための仕組みも整備することが重要である」とあります。
 苦情については、先ほど申し上げたように宝の山ですので、ぜひいただいた情報を識別、把握、処理して、不祥事の発見、行政改革などに役立てていただきますようお願いいたします。
 また、不祥事の発見には、発見型コンプライアンス・アンケートといったものもあります。いわゆる無記名アンケートですが、昨今、近隣自治体においても首長のパワハラ問題が噴出しております。本市ではパワハラといったことはないと思いますが、未知の不祥事の芽を摘むことができるかもしれませんので、機会がありましたらぜひ実施のほうをよろしくお願いいたします。
 内部統制制度の導入に当たっては、かなりの調査検討を要すると考えられます。また、ガイドラインを読むと、一度に全て導入することもかなり負担の多い制度であると感じております。そこで、できることを少しずつでも順次導入していただき、尾張旭市民の福祉の増進を図ることを基本とする組織目的が達成されますよう、今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。
 次の項目に移っていきます。

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